Nothing is known
練習後の帰り道、当然のように並んで歩くのは一つ年下のバッテリー。
春から中三になった元希は相変わらず長身な方に入り、一年坊主のキャッチから二年坊主のキャッチになった隆也はその学年にすればチビな方に入るだろう。初対面では一六〇センチあると言っていたが、二、三センチはさばを読んでいたに違いない。未だに、身長は一六〇そこそこといったところだった。キャッチの腕は少しはマシになったけれど。
元希の目線よりずっと低いところで、眠そうに目を瞬く横顔が小さく欠伸をかみころした。六回目。
元希は街灯の照らす川沿いの道に、視線を戻した。
練習場からの帰り道が途中まで一緒だと知ったのは、元希がシニアに入って一ヶ月ほど経った頃だった。理由は忘れたが、多分何かの偶然で帰りが一緒になった。下手なくせに生意気な一年キャッチとの帰り道は、互いに黙りっぱなしで、道が分かれるところで初めて隆也が「オレ、こっちですから」とそう言った。自分がなんと答えたのか、元希は覚えていなかった。「あっ、そう」とか、そんな感じだったろう。
隆也が目を細めて大きく口をあけた。七回目。
「Nothing is known 」より
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