熱伝道 2

















試合に向かうバスの中、隣の席では深い寝息をたててキャッチャーが眠っている。

試合先からの帰りのバスは静かだった。勝ち試合の高揚もおさまって、チームのメンバーたちは疲労に重くなったまぶたをそれぞれに閉じている。
窓ガラスに映る寝顔も、口を小さく開けてすっかり熟睡していた。

榛名の隣の席で眠っている2年生正捕手は、3年ばかりのレギュラーの中で、一番、身体が小さかった。成長途中の身体は体力も発展途上中で、一試合、一練習が終ると、くたくただ。いつも眠そうに見える目じりの下がった目を、いっそう眠たそうに瞬いていて。こんな風にバスで試合先から帰ってくるような時には、すっかり眠ってしまっていた。

榛名は窓の外を流れてゆく景色から視線を外し、正面を向いてシートに座りなおした。
ごそごそと物音をさせ、榛名は側らをいっこうに気にしなかった。一度眠ってしまうと、隆也はなにをやっても起きない。
だらりと投げ出された左手を、榛名は自分の右手に掬い上げた。

榛名の投げた球を捕る、手。キャッチャーミットを外した左手は、小さい。ボールを手に馴染ませるように、榛名はゆるく握られた左手をぽんと手の中に浮かせた。自分の球を捕る、手。これは、俺のボールを捕るためにある手。掴んで、また放る。何度繰り返しても、眠る相手は目を覚まさなかった。

ぴったりと目を閉じて、すうすう寝息をたてて眠っている。起きていれば生意気な口を利く可愛げのない後輩だが、寝ている顔は歳相応に幼なかった。




可愛いく、









ないけどな。






放っては掴む内に、小さな左手は榛名の手に馴染んで同じ温度に変わっていた。

バスの外の景色は夕暮れに染まっていた。


























■榛名が自分の左手の次に阿部の左手を意識していたらいいなとゆーちょっとした出来心です。自分のものぐらいに思ってたらいい。なあー。