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「え? な、なんで?」

「なにが?」



平然とした顔が振り返って、教室のドアをあけたまま固まってしまった浜田を見返した。平然じゃない心臓が、喉から出てきそうなほどどきどき鳴った。


「あー、浜田くん、おかえりー」

「た、ただいまー、です」


いつも近くの座席で昼食をとる女子生徒たちの中から、ジャージ姿の女の子がそう言った。なんでジャージなんだろ。ってゆーか、なんで……。


「浜田、サンキューなー」

「あ、ありがと、ハマちゃん」


買出しのじゃんけんに勝った田島と三橋が、それぞれに礼を言うのに「おお」と答えて。浜田はちらちらと泉の方を見ながら、机の上に四人分の買い物の入った白いビニール袋を置いた。盗み見る視線に気づいた泉が、礼の代わりに「なんだよ」と短く口を開いた。


「あのー、なんで、女子の制服着てるんデスか?」


4時限目が終わった時には男の子だったのに。チェックのスカートに同じ柄のリボンに髪のはしっこにはお花のついたピンクのヘアピンがついていて。足なんか細くって、ひっぱりあげた靴下の長さとか、妙に目のやり場に困るってゆうか。


「こいつらが着ろってウルセーから」

「だって、ホントに同じサイズなんて思わないもーん!」


「超ショックー」と大げさでもなく肩を落とすクラスメイトに、彼女の友人たちが笑った。「マジ、ダイエットだね」とか、「今日から昼抜きなよ」とか、そんな感じに。


「あは、は」


作り笑いの表情を、浜田は顔にはりつけた。頬の辺りが熱い気がするのは赤くなってるんじゃないのかと思うと、さらに顔が赤くなる気がした。
田島と三橋はさっさと菓子パンの袋を広げてるし、女子連中はダイエットの話を続けてるし、泉は「なあこれもう脱いでいい?」とか言ってスカートのすそつまみあげてるし。


ヤローのクラスメイトが女の子のかっこしてんの見て赤くなってんのって、オレだけ、ですか?


「言いたいことあんなら、言えよ」


浜田のひきつった笑い顔をどうとったのか、泉が低い位置から強い視線で見上げた。スカートにリボンにヘアピンとセットでそんな顔されても、なんてゆうか、すっごく。



かわいーんですけど。




「なんも、アリマセン」





浜田はひきつった笑い顔のまま、両手をぱちょぱちょと叩いた。





















web拍手お礼。ハマイズはよかです。